新潟スタートアップ勉強会

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インセンティブについて

 東芝による不正会計事件は、組織の中における不正行為がどのように起きうるかについての一例として非常に興味深い。


 その原因の1つとして挙げられるのは、過剰な損益改善の指示を「チャレンジ」と称して部下へ指示する行為が常態化していたことである。


 部下は、上司の言い分に対して、通常それらが実現不可能であれば反論するべきなのである。しかし、上司による叱責と、当該事業からの撤退を示唆するなど逆らうことが許されない状況に追い込まれていったようである。上からの命令に従うには、もはや不正行為以外には改善策がない状況の中、不正行為が始まった。会社全体にも同様の行為が広がり最終的には1000人を超える従業員が不正行為があることを認識していたようである。しかも、内部通報は1件もなかったとされ、その異常さは驚くべきことである。


 この不正会計事件から、上下関係とインセンティブについて少し掘り下げてみたい。


 上下関係とは、本質的に下の者が上の者に従う関係であるが、現代においてはそこまでの強い主従関係を持つことはなく、上司と部下、経営者と従業員であっても上からの命令であるからという理由だけでは全てを盲目的に実行するようなことはしない。


 しかしながら、過度なインセンティブを与えられている場合にはたとえ無理だと思われるような要求であっても、インセンティブ獲得のため受け入れてしまう。制度設計上の問題もあろうが、成果主義の導入によって社員の士気があがるどころか社員同士の協力関係を構築するというインセンティブが働かず、個人主義的でその場限りの意思決定が蔓延する場合があるようである。未来に向けた思考をせず、現在視点をベースにしたインセンティブでは組織の将来性は暗いように思われる。


 1つ感じることは、これまでの日本企業は、人口が増加し消費が増える状況の中で、従業員を叱咤激励していれば多少の売上変動はあれど成長する豊かなマーケットの中で共存ができた。しかし、日本は既に人口も減少し、さらには経営戦略としてグローバルな物流網や開発センターを構築する資金豊富な外国企業との競争にも巻き込まれている。「頑張ればなんとかなる」という考えだけではもはやどうしようもない時代なのだろう。


 これから必要になるのは、斬新なアイデアを実現することであったり、現状に異議を唱えるために行動できるような能力ではないだろうか。コスト削減だけでは、低コストを武器としたアジア各国の企業には勝つのは難しいのだ。



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